詩織へ

 

もう君と会えなくなってずいぶん時間がたったよ。

君が最後のため息をついた時、絶望の涙を流した時

私は100キロ以上離れた場所にいた。

 

今でもはっきり覚えている。その日は前日の台風一過、抜けるような青い空が

広がる気持ち良い日だった。

でも不思議なことが起こった。午後、突然雨が降った。

 

とても柔らかい、優しい雨だった。

それまでのうだるような暑さ、溜まった熱をほぐしてくれた。

そして まるで風のように消えていった。

 

きっとあの雨は 君の涙だったんだね。

ちょうど君の命が燃え尽きてしまう瞬間に

私は雨に肩を濡らしていた。

きっとさよならを告げに来てくれたんだね。

 

ゴメンね その時は知る由もなかった。

 

詩織、君を守れなくてごめんね。本当にごめんね。

あの日からずっと君に謝り続けているね。

きっとこれから先もずっと謝り続けていくのだろうね。

 

君は決して喜ばないと思うけど...

やっぱりそれしかできない。

 

ごめんね。

 

そして

 

もしかしたら君の命を救えたかもしれない

多くの守護者たちは

君に謝ってくれましたか?

 

謝罪の言葉は 君に届いていますか?

 

君の魂は 救われていますか?